ROCK A GO GO
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By Gen Ikegami
Here is Gen's fantastic report about a rock'n'roll show at 24 july ,by The BBS BAND !
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PART1
「メンバー募集」
7月17日木曜日午後11時、Gはテレホーダイタイムになってインターネットにア
クセスした。まず、E-メールを確認し(誰からも来ていなかった)それからNetscape
Navigaterを起動した。クカラララ。乾いた音を立てて、ハードディスクが回転してい
る。「Plug-inを読み込んでいます」という表示とともに作家でありミュージシャンで
あるY氏 のホームページが画面に現れた。このY氏のHPにはBBSと呼ばれる掲示板があ
り、Y氏自身や彼の関係者、ファンが自由に書き込みをしている。毎日、アップデート
しているようなものだからそのBBSを見るのがGの日課になっていた。
その日の書き込みを辿っていくとY氏のものがあった。タイトルは「ベースとドラム
を募集!」Gは文面を追った。一週間後にY氏がライブをやるのだがベースとドラムの
都合がつかない、自分のバンドの曲を知っている人で誰かやらないかという内容だっ
た。Gの胸は高鳴った。ベースは中2からやっている。それにロックを真剣に聞き出
したのは実はY氏によるロックに関するエッセイや小説などを通してのことだったか
らである。
すでに二人がドラムに、曲は知らないがと断わりつつ、立候補している。そしてベ
ースにも二人、ただし仕事でどうにも都合がつかないと書いている。Gは考えた。
自分も曲は知らない。そしてライブは平日だが仕事なんてスッポかすのは簡単だ。
「やってみたいのですが」言葉を濁しつつ、Gは書き込みをした。
きっとこの後も立候補者が出るだろう。それにプロミュージシャンにも顔の広いY氏
のことだからちゃんとした人が見つかるだろう。とりあえず自分がベーシストであるこ
とを伝えるだけで十分だ。そんな気持ちだった。
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PART2
「ライブ参加決定」
作家/ミュージシャンY氏のHPでのバンドメンバー募集に一応、立候補らしきものを
した翌日の金曜日、Gはやはり午後11時になってインターネットに接続し、BBSの内
容を辿り始めた。その後、ベースにもドラムにも立候補しているものはなかった。そ
してY氏の書き込み「ベース&ドラムス、決定!」のタイトル。えっ、どうなってん
? GはY氏の文面を辿る。「ベースはG君、ドラムはKさんに頼みたいんだけど、いいか
な?」な、なにー。お、俺かいな。曲知らん言うてるやん。どーすんねん!
Gは焦った。居間にいた妻のもとへ走った。
「えらいこっちゃ、Yさんのライブ出ることになった!」
「あっそ」
ロックに興味のない妻は事の重大さが分かっていない。
「曲はrealaudioでHP上にアップするのでこの土日で聞いてください。進行譜をキー
ボードのIがあとから書き込みます。3日後の振替休日の月曜日リハをします。」とY
氏のメッセージは続いていた。
すぐにGのもとへ、ドラムに決まったKさんからメールが来た。彼も慌てている。
エライことになった。Gは全身の血が逆流しているのを感じた。いや、こうなったや
るしかない。
という決意をそのままBBSに書き込みするのがやっとだった。
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PART3
「曲を!譜面を!」
作家/ミュージシャンY氏のライブに参加することに決まったGは土日の休日をとに
かく練習に費やした。久しぶりにベースを手に部屋にこもりきり。妻の機嫌は急降下
である。
そして一時間ごとにBBSをチェックし、ライブで演る曲のファイルと進行譜を待った。
結局、音が揃ったのが土曜の夜中、進行譜が揃ったのが日曜の夜中だった。だがこ
れこそインターネットの醍醐味だった。普通バンドでなんらかの曲をやろうと思えば
、メンバー全員分のテープを用意し、譜面をコピーで回さねばならない。それが一度
も会わずしてそれぞれの手元に瞬時に揃うのである。インターネットは便利なのでは
なく、限りなく自由なのだというY氏の言葉をGは思い出した。そしてリハの場所も決
まった。護国寺にある「ライトスタジオ」に昼12時から4時まで。
すでに練習のしすぎでGの両方の腕はパンパンに張っていた。進行譜は全て書き写し
、完コピは無理だが曲の雰囲気は大体掴んだ。しかし月曜のリハを考えると新たな緊
張がGを襲った。なにしろそれまでその著作に親しみ、影響されてきたY氏に実際に会
うのである。そして他のメンバー、キーボードのIさんもギターのMさんもY氏とずっ
と一緒にバンドをやってきた人であり、その存在はGもY氏の文章の中で知っているの
である。
しかし、何も持たずに会うほうがこわいのでは、とGは思った。とりあえず俺はベー
ス抱えていくんや。そしてバンドを一緒にやるんや。そのほうが接しやすいし、話も
しやすいんちゃうか。そうやそうに決まってる。Gはそう思うことにした。
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PART4
「いざ、リハーサル」
初めて下りる地下鉄護国寺駅からGは炎天下の地上へと出た。キングレコードの建物
を目印に「ライトスタジオ」を目指す。スタジオの入った細長いビルには程なく辿り
着いた。ビルの前の駐車スペースには真っ赤なアルファロメオがある。エッセイなど
に度々登場するY氏の愛車である。ビルに入り、Gは三人も載ればいっぱいになるよう
なエレベータで3階まであがる。スタジオのドアを開けると音楽が聞こえてくる。土
日にさんざん聞いたライブで演奏する曲である。
フロントのテーブルに人が3人いるのが見えた。一番奥にこちら向きにY氏が座って
いた。テーブルに置いたパワーブックが見えた。本の中やHPの写真そのままのご本人
である。「あ、あのベースやらしていただくGです」Gはちょっとだけビビリながら挨
拶した。
「おーおーおー、Yです。今回は急な話しでご免ねえ。よろしく。」
おー、なんか普通の感じや。全然エラそうじゃない。Gは安堵した。
「こちらがドラムやってくれるKさん。こっちがギターのM。キーボードのIがまだなんだ。」
同志KさんはGと同じく緊張気味だった。やがてIさんが到着し、リハが始まった。
Y氏が指揮を執るなかリハは進んでいった。Kさんはかなりドラムがうまい様子だっ
た。曲のコードと進行だけはとにかくしっかりやってきたので初めての曲でもなんと
か形にはなっていた。
「ベースとドラムが変わると曲の雰囲気が変わって面白いね」とY氏は言われた。
Y氏はリハ後、ロイヤルホストで食事を奢ってくださった。自著のCDブック2冊もく
ださった。
「じゃあ、本番よろしく。」
別れ際にY氏は言った。なんとかなるかも知れん、Gは思った。
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PART5
「ライブの夜」
リハから本番までの二日間、Gはほとんどベースを弾かなかった。細かいフレーズを
チェックするだけであとは曲の進行を覚えるのに必死だった。リハが終わった時点で
腕も指も限界に来ていたのである。
ライブ当日、会社を早退し、GはY氏と待ち合わせの西荻窪駅に遅刻しないよう早め
に向かった。車で来ると思われたY氏は改札口から現れた。ほどなくドラムのKさんも
遠路静岡から到着し、三人して会場のライブハウス「ワッツ」へ歩き出した。
演奏するのは7曲、リハでは2曲半を演奏した。本番までの時間を近くの喫茶店で
過ごすことにしたが急に緊張が募ってきた。GはKさんと頭を突き合わせ進行譜を前に
確認に必死である。ギターのMさんは余裕なのかマジなのか「1曲目ってキーはGだよ
ね」とか言っている。Aの曲なのにー。
出番は4バンド中、3番目だった。会場にいると緊張するのでGはKさんと共に会場
の外で出番を待った。予定より1時間遅れ、ついに出番が来た。時間が押しているの
でセッティングを素早く済ませる。Gはステージの低い天井へふうっとひとつ息を吐
いた。不思議と緊張は消えていた。ライブを演れる。音が出せる。そんな単純明快な
喜びが胸に湧いてきた。
Mさんのギターリフで一曲目がスタートした。Y氏が大きなアクションでステップ
を踏む。Kさんがフィルインを入れる。Iさんの鍵盤とGのベースが5小節目から入る。
さあ、ダウンロードは済んだかい?
ロックンロールショーが始まるぜ!!
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